Batis 2/25を手に入れました。
実はこの画角(24mm付近)の単焦点レンズ買う予定はなかったのです。Batisは135mmが気になっていて某フリマサイトで検索をしているときに超格安で販売されているのを発見し、意図せず勢いで購入してしまったのがこの25mmです。
特別な思い入れや憧れがなく、道端の曲がり角で突然ぶつかってしまうように出会ったBatis2/25ですが、それは運命の出会いであったのか、このレンズの魅力に引き寄せられていく毎日を楽しく過ごしています。
外見 「レンズの質量・曲線・テクスチャーが紡ぎ出す新しい美しさ」
実はZeissのバッジがついたSONY製レンズは多数所有していたため、なんとなく自分の中にZeissというブランドへの輪郭線が存在していました。今回はじめてZeissブランドのZeissレンズを触り、その輪郭線を打ち壊してしまうような「新しさ」と「美しさ」を感じました。
Zeissが樹脂製のボディを採用する意味
一般的に高級なレンズの筐体は鉄製です。人間と鉄との関係は数千年近く、耐摩耗性や剛性が優れています。鉄はそこに職人技の高度な処理を施し高級レンズとして仕立てる素材としてピッタリなのです。一方樹脂は人間との歴史が浅く製造も容易でありハイエンドな工業製品で採用されることは多くありません。
Zeissという老舗ブランドがプラスチック製の筐体を使うことは、相当にチャレンジングな行為のはずです。金属製のレンズには無機的な安心感、剛性感を感じますが、この美しい曲線で構成されたBatisの樹脂製の筐体からは有機的な柔らかさと手馴染みの良さを感じます。
Batisを通して語られるZEISSの精神
非常に斬新な有機EL、ゴム製フォーカスリングの採用からは「Batisシリーズは、まったく異なった撮影体験をユーザーに与える」というものづくりの意思を強烈に感じます。
本来はAF化自体を嫌う企業であったとも聞いたことがあります。一流ブランドとして、新たに自社の価値を定義しなおすことには、大きな葛藤があるはずです。それでも、現在のミラーレス化というカメラ業界の変化の先を見つめ、新しい形を指し示したBatisシリーズは、強烈な斬新さ、美しさとしてユーザーに届いています。僕はイチユーザーとして変わり続けていくZeissの意思とBatisを評価します。
緩やかなアールがかかったレンズのシルエットが美しく、レンズからフードへと触れるたびに手に伝わる曲線がとても心地よいです。
Distagonの銘が刻まれたフロントプレート。
SONY純正のレンズばかり使っていると、使うのが誇らしくなるZEISSロゴ入りのレンズフードとキャップ
α7に装着するとこのような感じ。
有機ELのディスプレイで被写界深度が表示されるようになっております。私はほとんど実用上使ったことがありませんが、電源を入れるたびに光るディスプレイをみると、まるで初めてPCを起動するときのような ーこれまでレンズからは感じたことのないー なにか新しいことが始まるときめきを感じます。
ZEISSの青が眩しい化粧箱に入っている。
24mm前後の選択肢は3つ
ご存知のように24mm近辺のEマウントにはいくつかの選択肢が存在しております。これらの比較ですがズバリ両方試写して予算と気分で選べば良いでしょう。スペック含めたキャラクターが大きく異なっているためほとんど迷うことは少ないと思います。
とりあえず明るめの24mmがほしいのならサムヤンを選べば問題はないでしょう。
SONY SEL24F14GM (FE 24mm F1.4 GM)
24mmF1.4の開放値が必要なら必然的にSEL24F14GM。
SAMYANG AF 24mm F2.8 FE
コンパクト・軽量・安価と三拍子揃い非常に良いレンズです。私は旅行用途の広角レンズではこちらをおすすめします。
Pick-Up 旅行風景用に最高。SAMYANG AF 24mm F2.8 FE SONY Eマウントレンズ レビュー
作例 明と暗の共存を許すZEISSの描写
私のつまらない作例をのせてみます。
僕自身がちょっと根暗で天の邪鬼な性格のせいか、ZEISSレンズの描写はハマってとても気持ち良いです。ハッピー写真はメーカー純正の大口径レンズにまかせておけばよいのです。
私なりに感じた特徴をまとめて見ます。
25mmF2.0が描き出す立体感
広角レンズは使うのが難しいレンズだと感じます。画角が広くなるがゆえ、標準・望遠に比べ「フレームインする要素、水平線・垂直線、フォーカスの位置」など気を使う部分が非常に多いのです。撮影者の配慮がないままむやみにシャッターを押した写真は立体感を持ちえません。
ただし、このBatis 2/25はF2.0の十分なF値のせいか、あるいは類まれなる分解能のせいか、気軽にどこをとっても不思議とまるで目の前に三次元の世界が広がるような立体的な絵を生み出します。
安心感と心地よさのある画
各収差や湾曲ががうまく補正されているためか、どの写真をみても心地よさと安心感があります。
このレンズは24mmではありません。たった1ミリの差ですが、水平画角は24mmの73.7°に対し25mmは71.5°と有意の差があります。実写上で24mmと25mmの差を感じることはありませんが、気分の上では僅かな違いを感じます。広角レンズ特有のパースのキツさや不安定な部分がすこし見切れていることもこのレンズの不思議な安心感に寄与してているのではないでしょうか。
※Zeissの広角レンズディスタゴンは25mmです。ここには歴史的な背景存在しているようです。
明と暗を描きわけるZEISSの描写
レンズの描写には違いや個性が明確に存在しています。言葉にするのは難しい「レンズの描写と個性」ですが、ZEISSの描写が好きな私は、そのキャラクターを「大人っぽい」「つややかさ」「冷淡」「ほとばしる」「情愛」ということばで表現することが多いように思います。ZEISSのレンズはなぜか熱さと冷たさの両極端が同時に存在しているように感じるのです。もしかしたらこういった状態をコントラストが高いというのかもしれませんね。
僕はZEISSのレンズが好きな理由は、その場の光の質感、空気の温度・湿度の最も高いところ低いところ、はたまた感情の幅までををしっかりと映し出してくれるからです。
スペック
最短撮影距離 0.2 m
つけっぱなしにするのは難しいが、組み合わせが楽しいレンズ
「広角ですべてを撮りきる」のは、やりがいこそあれ非常にチャレンジングです。
【イベント撮影】 Batis 2/25・SEL50F14Z・SIGMA 135mmF1.8
…35mm/50mm/85mmの組み合わせと違い、カットバリエーションが作りやすくや使いどころが明確で迷いがありません。
まとめ SONYの広角のプライムレンズでは間違いない選択肢
価格が高いこともあって、Batis 2/25おすすめできる人は、ZEISSの独特の味を求める人、理解できる人であることが条件のように思います。
ZEISSのチャレンジ精神が形となったレンズをもって撮る喜びは、代えがたい体験をもたらしてくれます。
僕にとって写真を撮るという行為は日常でもありますが、やはり非日常でもあります。
持ち出すだけで、ジリジリと熱く、でもどこまでもクールに気分を上げてくれるこのレンズは、僕にとって日常から非日常にいざなってくれる「導師」のような存在意義をもっています。
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