TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD A036 は28mm・汚いボケ・遅いAFに目を瞑れるなら良いレンズ。

TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) は広角28mm・汚いボケ・遅いAFというにデメリットに目を瞑れるならF2.8通しのスペックを550gというコンパクトさと圧倒的なコストパフォーマンスにまとめたメリットが際立つ非常に良いレンズだ。しかし便利さという快楽と引き換えに、中途半端さという毒を自分の写真の中に招き入れる自覚と覚悟を以て扱うべきレンズでもある。

爆発的に売れた3rdパーティEマウントTAMRON 28-75mmと、私の購入経緯 

このレンズの背景知識を少し記載すると、2018年5月24日の発売以降非常に評判が良くサードパーティ製Eマウントレンズの中では爆発的な売れ行きを示したレンズだ。昨今タムロン社はレンズのプロモーションに於いてインスタグラマーやSNSを積極的に活用、起用したマーケティングに注力しソニーα7ユーザーにタムロン製品を認知させることに成功している。

私も発売直後に何度かテストしたが結果食指が動くことはなかった。その理由はSEL24105Gと比較して、Tamron28-75が帯に短し襷に長しの中途半端なレンズであり、SEL24105G方が自分の用途にマッチし優れていると感じたためである。今更ながら購入に至ったのは友人から安価に譲り受ける機会があり、また2020年5月に新発売となるTAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)を購入したので「28-180mm」までTamronの軽量の大三元の標準、望遠域を揃えて仕事で使用してみたいと思ったからだ。大三元の標準望遠域レンズ2本が新品でも20万円程度の価格で入手できるのは驚異的だ。

 

では早速、世間では絶大な人気を誇こる(が、僕はいまいち距離を置きたい気になる)
TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) を外見から見てみたいと思う。

外見 「F2.8のスペックをコンパクト軽量にまとめた凄さ」

このレンズの素晴らしさを端的に述べるならば 28-75mm F2.8通しの明るさをコンパクト軽量なボディに詰め込んだことである。

レンズのデザインに目を向けると、ボディの質感は高いとは言い難く道具として扱う愉しみは期待し難い。一方で、レンズそのもののハンドリングやインターフェースとしての感触、操作感は価格、期待以上であった。装飾や工業製品として余分なこだわりを捨てた実用志向品という言葉が似合う製品だろう。このレンズは黒い外見こそしているが、ひとり暮らし用に企画された冷蔵庫や洗濯機、電子レンジといった「白物家電」にどことなく近い雰囲気を感じてしまう。

レンズの樹脂部分には製造上のつなぎ目が見られるのは性能には全く関係がないが残念なポイントだ。

TAMRON 28-75mmとSEL24105Gの比較 ソニーα7iii装着

よく引き合いに出され、購入時にも比較されがちなTAMRON 28-75mmとSONY SEL24105Gの外見をソニーα7iiiに装着して確認してみたいと思う。

物理的な重さはTamron2875が500gに対してSONY SEL24105Gが663gと100g以上の差があるが手持ちの感じだとそこまでの差は感じない。

Tamron28-75、SONY SEL24105Gともに、カメラに装着したときの大きさ・重さに関する印象は近い。

TAMRON 28-75mm のスペック

最大径x長さ 73×117.8 mm
重量550 g
フィルター径 67 mm
レンズ構成 12群15枚
絞り羽根枚数 9 枚
焦点距離 28~75 mm
最短撮影距離 0.19 m
最大撮影倍率 1:2.9 倍 
画角 75.23~32.11 度
手ブレ補正機構 無し 
防滴 ○  

 

Tamron28-75のスペックで際立つのは、

①F2.8通しレンズにしては重さが550gと非常に軽量なこと。

…ソニー純正のレンズF2.8通しのSEL2470GMが886g F4.0通しのSEL2470Zが426gなのでTamronのレンズの軽さが際立つ。なお、軽量化、コストダウンの為か手ブレ補正機構は搭載されていない。ソニーα7ii以降はボディ側にセンサーシフト方式の強力な手ブレ補正機構が装備されているので28-75mmの焦点距離のレンズでは十分対応できるだろう。

②レンズの先端ギリギリの19cmまで寄れる点も魅力的だ。
…他のレンズでは寄れない距離までよることができるので、このレンズならではの表現として転ずることができる。

③フィルター径はTamronのEマウントレンズラインナップで67mmに統一されており、フィルターを揃える手間が減る。

TAMRON 28-75mmの作例 ボケが汚い

私の拙い作例をいくつか載せてみたいと思う。

 

全体的に甘さを感じる描写

F2.8の開放はかなり甘めなレンズだが、ピント面のディティールや質感描写は十分な仕事をこなしてくれる。F4、F5.6あたりまで絞り込むと、見ていて安心感のあるシャープな像を結び始める。現代のレンズだけありコントラストも高く、色乗りもきついくらいに良い。

 

ボケが汚い。

このレンズで撮られた絵を見た時に、僕がいつも知覚する感性の一連の流れは、
まず主題たるピント面に眼がいく、ヌケ感はないが違和感はない。次に次第とアウトフォーカス部へ視線が移動していくにつれ、そのつながり方にどことなくぎこちなさを覚える。最後に後ボケを見る頃にはそのうるささと下品さがどうしても鼻についてしまう。前ボケにはそこまで違和感を感じないのだが、後ろボケがどうも汚く上品さに掛けるレンズだと思う。

ズバリ言ってしまうと安物のズームレンズの描写そのものなのだ。広角〜望遠まで破綻なく間違いなく価格以上の写りをするし、絵としてもうまくまとまる場合も多いが、隠しきれないザ・安物ズームレンズ感が出てくる絵の根底に染み付いているように思えてしまう。

前ボケに違和感は少ない。

フレアの入り方は心地よい
このレンズの良い点として、逆光時のフレアの入り方が美しいと思う。レンズそのものの甘い描写と合わせて夕暮れ時に使いたいと感じる。

 

※レンズ補正前では湾曲が見られる。昨今のレンズはソフト側でのレンズ補正を前提に設計されているので問題になる部分ではない。

 


被写体のディテールを捉えて魅せる表現よりも、光のトーンをうまく捉えて絵にまとめる方が向いている。
光を表現したい時、しっかりと作者側の意図に寄り添いその光を描きわけてくれるだけの表現力もある。当たり前ではあるがプライムレンズのように解像力、キレが際立つという訳ではないので、被写体の生命力や空気感を切り取るようなザハリヒ的な表現よりも、光のトーンをうまく生かした表現が得意だと思う。

 



望遠側の5mmは些細な差、広角側の4mmは致命的な差。

望遠側の5mmの差は昨今の高画素化されたボディであればクロップでどうにでもなるし絵的な差異はほとんどない。一方で広角側の24mmと28mmは出てくる絵と世界観が全く異なる。このレンズは広角側が24mmでないことが本当に本当に残念でもったいない。必要な画角をカバーするというズームレンズ本来の価値を果たせていなく、メインのズームレンズとしての基準に及ばない。
28mmという中途半端な画角は一昔、二昔前のズームレンズであれば許容されたスペックであろうが、現代においては割り切り過ぎだ。私は旅に最高のレンズの組み合わせは24mmと50mmの単焦点だと思って実践しているが、お手軽ズームレンズを使うにしても広角端28mmだと旅行でも記録的な撮影でもどうしても足りないシーンが出てくる。また28mmは昨今のスマホのメインカメラに主に採用されやすい画角であり、せっかく「カメラを使って良い写真を撮るぞ!」と意気込んでも感覚がかぶってしまい24mmというスマホを超えた広角側を使う愉しみを見出しにくい。

 

28mm

24mm

AFは体感できるほど遅いシーンがある。

まだ仕事の撮影でAFはテストできていないが、スナップでのテストではいささか不安を覚えるレベルでAFが遅いシーンがあった。

常に遅いという訳ではなく、コントラストがはっきりしていてAFが大きく動かないような時には早いのだが、AFが苦手とするシーンでは1秒以上フォーカスが合わないこともあった。
SEL24105GのAFを99:1とするとTamron28-75のAFは90:10といった印象。

まとめ どこまでも貫かれた中途半端さが、中途半端な今の時代にマッチしたレンズ。

このレンズの最大の魅力はF2.8通しのパワーを軽快なハンドリングのコンパクトボディに詰め込んだ素晴らしさと新品で8万円代で購入できる圧倒的なコストパフォーマンスだ。しかし、なにかを表現しようという明確な意思があるときには真っ先に選択肢から外れてしまうレンズだ。これらを統合して言うと気軽にだましだまし楽をして適当に撮りたいときには、これほど頼もしく良いレンズは本当に無い。(そういう撮影シチェーションも多々あるはずだ。)そういった割り切り方をされているレンズだということを知っておいてほしい。

 

なんというか、今の時代らしく、それなりにそれなりのものが撮れるレンズだ。

手放しにこのレンズをおすすめする人には警戒が必要と感じる。前置きを踏まえて「ズームレンズのメリット・デメリット・28mm・汚いボケ・遅いAFだけど便利だからおすすめだよ。」と言わないのであれば中途半端な理解しかしていない、もしくは中途半端な人である可能性がある。なんと言うか便利なんだけれども僕自身はもっとも好きではない部類のレンズかもしれない。カメラと写真に限った話では無いが初心者向けのプロダクトや便利なツールは安易に使うと使い手がだめになる感覚がある。ダメとまで言わずも、便利道具を使って感性が磨かれることは少ないだろう。

このレンズが爆発的に売れる世の中を嘆きたい、などそんなことは僕の知ったことではない。
このレンズは便利さを求めるなら間違いなく最高の選択肢だ。ただし便利さという快楽と引き換えに、中途半端さという毒を自分の写真の中に招き入れる自覚と覚悟を以て扱うべきだということを僕はここにしっかりと書きたい。

 

では、僕は何がおすすめか、SEL24105G。これはとても誠実なレンズだ。あるいは、それよりも先に写真を始めるにあたりファーストレンズを探しているのならばズームレンズという選択肢を捨てプライムレンズSEL55F18Zが良いだろう。